久しぶりにすさまじいホラー作品を視た。しかも単なるB級と期待していたら、低予算で高品質なB級だった。これは視ておいたほうがいい。「イット・フォローズ」。

あらすじとしては、ティーンエイジャーの娘がある日カラダを許した男からなぞの存在「それ」に死ぬまでつけまわされる呪いを伝染され、死ぬほどこわい思いをする、という話。

肉体関係で呪いが継承されるというと下世話なものを想像してしまう。ぼくもそれが不安で彼女と視れなかったのだがご心配なく。全体的には根底はティーン男女の鮮烈で甘酸っぱくて絶望的な恋愛劇になってる。

さてさて、この映画の最大のポイントは「絵の撮り方への細かいこだわり」だろう。ひとつには長回しでカメラをゆっくりとパノラマのように視点移動し、状景を観客の頭にしっかり叩き込む。開幕1分で使われるこの手法は「それ」のおとずれに警鐘を鳴らす独特の恐怖演出として頻出する。

もうひとつは消失点を真ん中に持ってきたシンメトリー風景の多用。これもまた消失点に「それ」を置く演出だが、ラストでは別の意匠をオーバーラップさせることで「ありがちなのにありがちじゃないエンドレスホラーの描写」に成功している。

さて、映画の二番目のポイントは人間関係の描写に注意深く力点を置いていること。主人公側のキャラクターは、基本的に最初の居間のシーンで勢ぞろいする。相互の淡い恋愛感情はここですべて無言のうちに説明される。手際がいい。なおかつ、主人公が後半山場で対決する「それ」の姿も、このシーンにおけるとある欠乏で示唆されているのだ。

そして、全編に漂う独特の魅力が「言いようのない悪夢感」だろう。「それ」がいわゆる不定形の「シェイプシフター」であること、自分にしか見えない理不尽はもちろんだが、建物や自家用車・家電が70年代を思わせるように古く、いっぽうで最新の電子書籍端末が使われている不条理。なぜか入ってはいけない金網に閉ざされた街。悪夢にうなされているときのあの不安感が上品に表現されている。

とにかくこれらの視覚面と物語法だけでも視る価値がある一本だ。俳優陣が無名なのにもかかわらず、主人公の濡れ場を含めた(!)演技の等身大さ、まわりの仲間たちのティーンエイジャーらしい青臭い立ち回り。これも評価しておくべきだろう。

監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルは前作の「アメリカン・スリープ・オーバー」でもティーンエイジャーのドラマを描いたそうで、それをホラーに転調させてもこれほどの作品ができるとは、才能の確かさを如実に表している。できれば今後もホラー、あるいはサスペンス路線でそのメガホンをふるってほしいものだ。